食品の温度管理を適切に行わないと、食中毒などのトラブルが発生する原因になります。日本では2021年6月から全ての食品関連企業に、世界的な衛生管理手法であるHACCPの導入と運用が義務付けられました。HACCPでは危害要因の分析を行い、細菌などの健康への悪影響を予測して具体的な管理方法とルールを定めます。この衛生管理手法では全ての製造工程を細分化してリスク管理を行いますが、特に重要な工程は連続的・断続的に監視と記録が行われます。
包装から出荷までの段階で一部の製品だけを対象として行われた従来の抜き取り検査と異なり、HACCPでは全ての製品が管理対象となります。食中毒などトラブルの原因となる細菌やウイルス、有害物質は危害要因であり適切な温度管理によって発生と増殖を抑制しなければなりません。一定以上の細菌やウイルス、有害物質が付着した食品を食べると下痢や腹痛の他に発熱や吐き気などの症状が起こることがあります。原因によって症状が現れるまでの時間や程度には違いがありますが、命に関わることもあるので注意が必要です。
6月から9月にかけて気温と湿度が高くなると食中毒の原因である細菌が発生して増殖しやすくなりますが、ウイルスは気温が低くなる冬に流行するのが一般的とされています。HACCPを導入すれば、季節ごとの温度や湿度の変化に応じて適切な衛生管理が行われます。全ての工程について適切な温度管理や湿度管理が行われるため、細菌やウイルスの繁殖を抑えて食品の安全を守ることができます。